2013年9月25日水曜日

確かに本物の「メリアン聖書」!

(2013/9/25)
今の時代は正確な復刻版の印刷で、そっくりさんがすぐできてしまう時代。
  三鷹の図書館で見つかった聖書が写真で見ただけで、「メリアン聖書」と判定できても、手にとってみてみなければ、本物とは断定できない。そこで去る19日、三鷹まで出かけた。
 
こういう場合の常識として、まず白の手袋をつけることから始まる。私の手脂が古い紙につくことがあってはならないからだ。表紙から1頁ずつめくっていく...。紙は確かに今のものではない。今の復刻版のオフセット印刷でもなく、確かに活版印刷だ。  中表紙の記述もルター訳の旧新約聖書にメリアンの銅版画の挿絵を多く入れたものとある(これは写しに基づいて帰宅後ドイツ語を現代文字にして、逐語訳をしておいた)。
  メリアンの挿絵は精密で、繊細、きっと克明に見れば「三十年戦争」時代の民衆の憂いの跡をとどめて、感銘を深めることだろう。手に取ってみた実物での発見はこの聖書に、現代のものと同じ「節」が入っていたことだった。これまた帰宅して調べてみたところでは、ルターの没後すぐ1551年には新約に、1553年には旧約に節が入り始めたという。聖書の各国語での普及がもたらした結果だったのである。大分痛みがあるから、少し修復作業が必要だろうということになった。
 







 
しかし、このちょっとした発見からすぐのこと、9月23日の「一日神学校」では、図書館で特別展示をした。当日の来会者数百人の中から百五十余人の人が図書館を訪れて、この展示に感動していたという。修復がなったときにはまた、定時の展示が行われることだろう。宗教改革五百年に向けての、日本での小さな、しかし嬉しい発見である。(徳善義和)

2013年9月11日水曜日

東京/三鷹のルーテル学院図書館で、1630年印刷のルター 旧新約聖書発見!

(2013/9/11)
 




  先年図書館の耐震改修を行ったルーテル学院大学・神学校だが、4階に積み上げられていた未整理の本を整理していたところ、大判の古いルター訳旧新約聖書が発見された。1630年シュトラスブルクで印刷されたものであり、最近でも40年近く、未整理図書として4階のかなり高温多湿の空間に放置されていたために、いささか痛みや虫食いが見られるものの、まごうことなく1630年印刷の実物である。  
  何年か前シュトゥットガルトの図書館で、同じように未整理の本の中から、ルター自身の書き込みのあるルター訳聖書が発見された、とドイツのある日刊大新聞がスクープして大騒ぎになった(これは結局筆跡鑑定の精査の結果、ルターの弟子がルターの筆跡を真似て書き込んだものだろうという結論に達した)。こういうことがあるものである。そこでまずはいささか調べてみた。

 そもそもグーテンベルクの活版印刷の発明以来10年ほどのこと、シュトラスブルクは1466年以来活版印刷の町、その印刷の多くはルター以前のドイツ語訳聖書の部分出版などで、1518年までに十数種類のものが知られているようである。この実力が認められていたから、ルター訳の聖書ができるとアウグスブルクに次ぎ、ニュールンベルクに先立って、その印刷を始めている。この伝統を引き継いだのがL.ツェットナー(1551-1616)とその子孫の印刷所である。この印刷所が1630年にこの旧新約聖書を印刷、出版したわけである。
 この聖書には特別に注目が集まる。M.メリアン(1593-1650)の銅版による挿絵が多く印刷されているからであって、特別に『メリアン聖書』と呼ばれているほどである。メリアンはフランス、ドイツ、オランダで銅版画の修業をした後、銅版画師でもあった伯父の求めにより、1624年にフランクフルトで聖書の挿絵に取り掛かり、1625-27年の間に250枚の銅版画を製作したという。これを用いて1630年にルター訳旧新約聖書を出版したのがツェットナー印刷所だったわけであり、17世紀の聖書とその挿絵の印刷史、美術史上の傑作と言われている。それは最近復刻版が出版されていることでも証明されよう。
今回三鷹で見つかったものもインターネットの検索で調べる限り、ほぼこの『メリアン聖書』そのものであるらしい。しかるべく修復されて、適切に展示も、研究もなさるとよいのではなかろうか。 
                                                                                                                      (徳善義和)   


2013年9月9日月曜日

一致に関するルーテル=ローマ・カトリック委員会

8/14のブログに書いた委員会が京都で開催された。この委員会は、教会の一致に関する事柄をバチカンと世界ルーテル連盟の間で神学的に検討する委員会で、毎年継続的に開かれてきている。ルーテル側からは共同議長のエーロ・フオヴィネン監督(フィンランド)はじめ10人、カトリック側はウイリアム・キーニー司教(英国・今回は欠席)が共同議長となって10名、合計20名で構成される。今回の主題は「洗礼と交わりの成長」。様々な国でカトリック教会とルーテル教会の間で「洗礼相互承認」が行われているように、今はまだ一致していない聖餐での交わりまでに至る神学的・実践的根拠を確立することが「交わりの成長」という言葉の意図だ、と我らが鈴木浩委員(日本福音ルーテル教会)はおっしゃられた。 先の4年間の討議の成果が本年6月17日に発表された「対決から交わりへ」という共同文書であるが、この出版まで何年も会議を重ねてきたように、このテーマでも対話の積み重ねが必要になり、「対決から交わり」に至った場合よりももっと時間がかかることも予想されているそうだ。